2026年7月時点ではレバノン全土に外務省危険情報レベル4(退避勧告)が発出されている。本記事は2019年10月に個人旅行でレバノンに訪れた際の治安状況や観光地の様子の振り返りであり、今時点での旅行を推奨するものではない。安全な情勢に戻り、再びこの国を安全に旅行できる日が来ることを切に願っている。
施設、飲食店、宿泊先等の営業時間、料金、サービス内容等は旅行当時のものである。状況が改善して旅行できるようになった場合は、必ず各公式情報を確認してほしい。
なぜレバノンか
以前チュニジア旅行の記事で書いた動機と同じである。豊かな自然や遺跡が好きなこと、旅行先としてそこまでメジャーではない国であること、を基準に探していたところレバノンに行きついたのだった。バールベック遺跡に代表されるローマ時代の遺跡があり、国旗にも描かれるレバノン杉の森といった自然が豊かだとのことだ。
懸念としては治安だが、東部のシリア国境近辺や南部のイスラエル国境近辺以外は外務省危険情報はレベル1だったし、某旅行会社ではツアーも組まれていたくらいなので問題ないだろうと考えた。
準備・情報収集
日本語の情報はほとんどなく、ガイドブックとしては地球の歩き方「ペトラ遺跡とヨルダン・レバノン2019~2020」に30ページ程度の記載があるだけ、あとは旅行会社のツアー情報、GoogleマップやTripadvisorで情報収集を行った。
レバノンについて
基本情報:首都はベイルート、宗教はキリスト教、イスラム教それぞれの宗派が混ざり合うモザイク国家である。公用語はアラビア語だが歴史的経緯からフランス語も通じる。
通貨:通貨はレバノンポンド(LBP)。2019年当時は「1 USD=約1,500 LBP」の固定相場制で安定していたが、その後の深刻な経済危機とハイパーインフレにより、2023年には約15,000 LBP、2024年以降は1 USD=約90,000 LBPまで大暴落しているようだ。実に旅行当時からは対米ドルで1/60まで通貨価値が下落したことになる。
位置:東地中海に位置しており、北と東はシリア、南はイスラエルと国境を接する。レバノンの国土面積は約1万㎢で、岐阜県と同等とよく例えられる。それだけ狭いということを言いたいのだろう。
ビザ:空港到着時に1か月有効なビザが自動で発行される。なお、レバノンはイスラエルと敵対関係にあるため、パスポートにイスラエルへの入国スタンプがある場合は絶対に入国できない。この国を旅行する場合に最も注意すべき制約の一つだ。
観光地:数千年にわたって大国が交錯する舞台となっており、古代フェニキアやローマ帝国の遺跡群、オスマン帝国や近代のフランス委任統治領の影響が色濃い建造物など見どころは多い。特にビブロスは「バイブル」の語源とも言われる歴史がある。
レバノンへの行き方
東京からの直行便はなく、ドバイやドーハで乗り継ぎが必要。今回はドバイ乗り継ぎで行ったのだが、ドバイからベイルートへ向かうフライトの時間の都合もあり、ドバイを一日観光してからベイルートへ向かうことにした。
スケジュール
旅行スケジュールは以下の通り。
- 10/18(金) ドバイへ移動・観光
羽田(0:30)~ドバイ(6:45)(EK313)
ドバイ観光・宿泊 - 10/19(土) ドバイからベイルートへ移動
ドバイ(7:30)~ベイルート(10:35)
ベイルート観光・宿泊 - 10/20(日) ベイルートからブシャーレへ移動
ブシャーレ観光・宿泊 - 10/21(月) ブシャーレ観光・宿泊
- 10/22(火) ブシャーレからバールベックへ移動
バールベック観光・ベイルート宿泊 - 10/23(水)~10/25(金) レバノン南部とビブロス遺跡観光・ベイルート宿泊
- 10/26(土) ベイルートから羽田へ
ベイルート(22:55)~ドバイ(3:50)(EK2063) - 10/27(日) ドバイ(8:35)~羽田(22:45)(EK312)
ドバイにはそこまで関心がなかったのだが、定番のパーム・ジュメイラやブルジュ・ハリファなどは一度見ておこうと思った。
レバノンは広くないのだが観光地が北から南、東まで散らばっているので一週間かけてじっくり回ることにした。各都市についてはその都度詳細を記載予定。
ドバイ探索
まずはドバイへ行き、空港からホテルへの送迎バスで一度ホテルへ向かい荷物を預かってもらった。
泊まったホテルはPremier Inn Dubai International Airport(プレミア イン ドバイ インターナショナル エアポート)。翌日は早朝に空港に行く必要があったので空港近くのホテルを選んだ。部屋はとてもきれいでバスタブも付いており文句なしだったのだが、都心から離れているせいか、値段が異様に安かった。
加えて空港からホテルへ、ホテルから都心部へ、無料の送迎バスが出ている。都心部からドバイメトロで空港へ行き、空港から送迎バスでホテルに戻ることが可能。
1泊程度なら立地を気にする必要もないと思うのでとてもおすすめである。
- Premier Inn Dubai International Airport 1泊で約3,500円
Premier Inn Dubai International Airportの詳細・料金を確認する(Agoda) ![]()
荷物を預けた後はホテルのバスで都心部へ向かった。車窓からの眺めは「高層ビルがニョキニョキそびえ立っている」イメージそのままだった。
まずは定番のブルジュ・ハリファへ。ここはドバイ・モールという巨大なショッピングモールが併設されている。入っている店はいわゆる高級ブランドが多く、個人的に買うもの、興味をそそられるものは特になかった。
ただ、ブルジュ・ハリファといえばミッションインポッシブルでトム・クルーズが登っていたシーンが記憶にあるが、実際に見てみると本当に高い。828メートル、163階建ての世界一の高層建築物なので当たり前なのだが、やはり圧倒されてしまった。


モール内のフードコートにあったファストフード店で昼飯を食べた後はドバイメトロで人工島パーム・ジュメイラへ。地上を歩いてみても、はっきり言って「ただの綺麗な道路と高級住宅街」なので、あのヤシの木の形状は全く実感できず、目を見張るものはなかった。ここは上空から見下ろすか、周辺の高級ホテルに泊まってゆったり過ごすのが王道なのだろう。長居はせず次へ向かった。
色々書いてきたが、わずかな滞在でも街の圧倒的な発展具合は肌で感じることができた。基本は車社会の構造だが、ドバイメトロが機能しているため、一介の旅行者でも移動に不自由することは一切ない。治安面に関しても、日中・夜間を問わず身の危険を感じるような瞬間はなく、極めて安定している印象を受けた。
あまりポジティブな内容に見えないと思うが、ここは個人の好みということでご容赦願いたい。
夕方からは旧市街へ向かった。ドバイ・クリークという運河をはさんで北側が旧市街で、ブルジュ・ハリファ周辺のような高層ビル群ではなく、色々な専門店が並んだ商業エリアとなっている。手頃なホテルはこのエリアに多いようで、洗練された人工都市よりも泥臭い街歩きが好きな身としては、圧倒的にこちらの旧市街の方が歩いていて面白かった。


非常事態?
都心部で一通りの観光と晩飯を終え、メトロで空港へ行きホテルの無料送迎バスで部屋に戻った。翌日は早朝に出発する必要があり、ゆっくり風呂に入って寝ようと思っていた矢先、ホテル予約サイトから一通のメールが入った。
ベイルートでは空港からホテルまでそのサイトでタクシーを予約していたのだが、件名を見るとどうやらその送迎についてのようだ。内容としては次の通り。
「現在レバノンで起きている状況を踏まえ、空港と都心部をつなぐ道路が封鎖される可能性があり、その場合はお迎えに上がれない。状況は流動的なので随時確認してほしい。」
現在の状況とは?道路の封鎖?全く状況がわからず、とりあえずインターネットでベイルートについて調べてみた。すると、レバノンで反政府デモが勃発し市内では道路の封鎖や暴動が起きているとの記事が出てきた。
外務省から退避勧告が出ているわけでもなく、さすがに今更キャンセルもできまい。あくまで「送迎ができなくなる可能性がある」というだけであって、現状はキャンセルされたわけではない。とりあえず行ってみて、さすがにこれはヤバいという状況であれば最悪帰国するしかない、そのような方針で向かうことにした。
もちろんこのような事態は人生で初めてだった。果たしてどうなるのだろうか。レバノンに入国して終わり、という事態にはならないだろうか、そのようなことを思いながら眠りについた。